樹脂サッシについて考えてみる

家作りの考え方

樹脂サッシは今やかなり一般的なものとなりました。

アルミサッシに比べて断熱という点においては圧倒的に優れています。

まあ、サッシの面積なんて家の面積に比べればたいしたことないので、気にしなくてもいい程度とも言えますが、断熱にこだわるなら、サッシにもこだわりたくはなります。

でも、樹脂サッシにも、アルミサッシに劣る点があるのです。

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樹脂サッシのデメリット

強度に不安

アルミと樹脂。

比べれば当然金属であるアルミのほうが強度が上です。

そのためなのか樹脂サッシには、割れるというリスクがどうしても付きまといます。

新築当初は大丈夫でも、経年劣化によって徐々に粘りが失われていくのか、ある程度の年数がたった樹脂サッシに何らかの衝撃が加わると危険です。

そもそも衝撃が加わるとどんなサッシであろうと危険ではありますし、ガラスはサッシに関係なく危険ですので、できるだけ避けたいのですが、サッシだけに衝撃が加わる場合、樹脂サッシのほうがより危険と言えるかもしれません。

ただ、サッシだけに衝撃が加わる可能性はそこまで高くもありませんので、あまり気にしなくてもいいかもしれません。

とはいえ、かなり割れにくいように厚い樹脂素材を使っていても、アルミに比べれば割れる可能性は断然高いです。

アルミサッシの場合は、割れはほぼ皆無。

ただ、アルミの場合は、衝撃が加わると凹んだり曲がったりしてしまいます。

どうしても重くなる

樹脂サッシはどうしても重くなります。

アルミより軽い樹脂を使っているのになぜ?と思ってしまいますが、理由は簡単。

上でも挙げたように、樹脂はアルミより弱いからです。

弱い樹脂でアルミと同程度の強度を出すためにはどうするか?

強度を出すためには、アルミよりも樹脂を分厚くするしかありません。

アルミに対して、分厚くなってしまうということは使われている樹脂の量が多いということ。

そのためアルミサッシよりも樹脂サッシは、かなり重くなってしまうのです。

強度のことを考えると単純に分厚くして強度を高めるしかないため、どうしても重くなる。

これはアルミ、樹脂、それぞれのサッシの窓を開け閉めしてみれば、誰でもわかるくらいに違います。

ただ、この重さについては、意外にもメリットを感じることもあります。

開け閉めには重くて不評ですが、重さのおかげで雨風の音などを伝えにくいです。

樹脂自体も防音効果がありますが、それ以上に窓の重さ自体が窓のがたつきを防ぎ、防音の効果を発揮します。

経年劣化

アルミも多少は劣化しますが、一般的な環境では基本的にほとんど問題とはなりません。

対して、樹脂。

樹脂は、紫外線や温度の変化など様々な理由によって、劣化して割れや色の退色を生じることがあります。

サッシに使われる樹脂は、紫外線や温度変化などには常にさらされることになりますので、一般的な通常の樹脂の中で、より劣化に強い樹脂が採用されています。

それでも、アルミよりは当然劣化について気を付ける必要があります。

紫外線や温度という環境にもよるのですが、劣化という点では金属であるアルミよりも確実に劣っています。

色あせについても確実に起こります。

濃い色では色あせるような感じになり、薄い色では、黄ばみ、黒ずみが気になります。

ただ、色あせについては、周りの外壁なども汚れたり退色するので、それほど気になることは無いかもしれません。

ただ、白いサッシが黒ずんできた場合には結構気になるかも。

樹脂サッシの取付方

このように基本的に強度面に不安がある樹脂サッシですが、樹脂サッシが日本に導入されてから、すでにかなりの年月がたっています。

その中で割れが発生したり、問題が発生した割合は、それほど高くありません。

さらに、樹脂サッシもその材料である樹脂自体も、どんどん改良が進んでいますので、それほど気にすることはないのかもしれません。

ただ、アルミサッシと比較した場合、強度や劣化の問題については、間違いなくアルミサッシよりも大きなリスクがあると思います。

そして、アルミより劣化しやすいであろう樹脂サッシの使い方、取付方に個人的に大きな疑問を感じています。

基本的に樹脂は経年劣化などにより消耗する、と考えていいと思います。

消耗するということは、交換することを前提として考えた構造であるべきでは?と思うのです。

樹脂サッシの構造を見てみると、窓自体は簡単に交換可能です。

でも、窓枠はどうなっているでしょうか?

窓枠は、外壁を外さないと簡単には交換できないような構造になっている。

これが一番の問題だと考えます。

いくら劣化しにくい樹脂を使用していたとしても、樹脂である限り劣化します。

ならば交換が簡単にできるような構造にすべきだと考えます。

樹脂が悪いわけではありません。

その構造が一番の問題のような気がしています。

樹脂サッシのメリットの疑問点

デメリットについては、これくらいにしておいて、今度はメリットについて考えてみます。

主なメリットとしては、断熱性があげられます。

樹脂サッシがアルミサッシより断熱性がいいのは間違いないのですが、少し疑問に感じる点もあります。

家全体で考えたときのサッシ

断熱という点については、アルミサッシに比べて、樹脂サッシが圧倒的に高性能です。

アルミという材質は、非常に熱を伝える材質で普通の鉄よりも数倍熱をつたえますので、樹脂のほうが断然いいのは間違いない。

でも、家全体で考えた時、そもそもサッシについてそこまで気にすべきだろうか?と考えると難しい問題となります。

ガラス部分は家の面積で考えても大きな部類に入ります。

でも、窓枠であるサッシの部分の面積は微々たるものでしかありません。

さらに、24時間換気において、排気した分、外気をそのまま取り入れると冬場はかなりの熱損失があります。

その量は、サッシの違いによる損失より数倍大きいと考えられます。

ある問題に対応する場合、対応すべき順序は影響の大きなものから行うのが一般的です。

本来は、換気システムについてもっと対策すべきだと思うのですが・・・・。

サッシについては徹底的にこだわるのに、換気についてはそれほどこだわらない、というのは断熱という意味においては本末転倒です。

サッシだけではないのですが、断熱というのは熱を断つということになります。

これは常に熱を断ち続けます。

どういうことかというと、屋外の気温を上手に室内に生かせないということになります。

実際、真夏や真冬は高断熱な家が有効なのかもしれません。

空調などの冷暖房器具を使って室内を快適にする。

その快適さを、熱のロスが少ないため安価に維持することができます。

でも、春や秋には屋外が快適な環境であった場合、外気や太陽の熱を室内に取り入れたくても、うまくいかないということになってしまいます。

それはもちろん高断熱なため熱をすべて遮断しているから。

常にエアコンを入れているから大丈夫。

そういう考え方もありますが、エアコンにできるだけ頼らずに、自然の状態で快適に暮らしたい、という気持ちも、少なからず持っている方も多いと思います。

軸組みではより心配かも?

木造軸組みにおいて、樹脂サッシを採用するのはどうなのでしょうか?

おそらくすでに実績はたくさんあるとは思いますが、普通の軸組みでは構造上、2x4などと比較して、木の動きのために家が動くと言われており、2x4よりも断然時間経過における家のひずみやゆがみは大きくなると思います。

この木の動きについては、ひずみやゆがみはあるものとして、家の構造自体に問題は起こりませんが、それが樹脂サッシに及ぼす影響は、どこまで考えられているのでしょうか?

おそらく大丈夫なのだと思いますが、ひずみやゆがみは樹脂サッシにとっては、あまりうれしいものではないかもしれません。

ただ、このゆがみはそれぞれの家によって違うので問題が顕在化しないのかもしれません。

一部の樹脂サッシの割れが発生した家などは、もしかしたら家の構造上、ひずみやゆがみが多い構造になっているのかもしれません。

ただ、樹脂サッシの割れは軸組みだけというわけではないので、単純に軸組みには不向きである、ともいえませんが、構造的により強度のあるアルミサッシのほうがいいのではないか、と個人的には思ってしまいます。

しっかりと比較検討することが大切

私は個人的に、アルミサッシと樹脂サッシのメリット、デメリットを比較して、さらに最近の樹脂サッシの価格の低下から、アルミサッシと樹脂サッシの価格差まで考慮した場合、樹脂サッシの採用はあり、だと思っています。

樹脂サッシならその断熱性から冬にサッシが結露する可能性はアルミサッシに比べればかなり低くなるでしょう。

樹脂サッシのメリットは確実にあります。

でも、もし予算の都合から減額を考える時には、減額の候補として挙げざるを得ないかもしれません。

樹脂サッシを採用しないなんてありえない、というほどの効果や圧倒的なメリットがあるか?と考えると少し疑問を感じています。

当然なのですが樹脂サッシを推奨する人は、樹脂サッシのメリットばかりを強調します。

アルミサッシは時代遅れで、何もメリットがないかのように。

さらには、海外では樹脂サッシが当たり前だ、というような情報など、環境や家の構造などによる違いなどはまったく考慮せず、誤認させるような広告や宣伝まである。

たしかに海外において、樹脂サッシも多いですが、木製サッシはそれ以上に多いです。

そして、サッシの種類も違う。

日本では一番よく採用される引き違い戸ですが、海外の多くの国では、主流ではありません。

上げ下げ窓、滑り出し窓、ドレーキップ窓などが多いように感じます。

実際には海外と日本を比べると、一般的な窓の構造自体が異なっているのにサッシの材質だけを見て、海外では樹脂サッシがあたりまえです、と言っているようでは、わざと誤解させようとしているのでは?と言われても仕方がない気がします。

樹脂サッシには、間違いなくメリットがあります。

でも、アルミサッシにも大きなメリットが存在しています。

家において重要な耐久性や強度、そして、日本において、樹脂サッシよりも遥かに長く使われている、という実績など。

両者のメリット、デメリットをきちんと比較検討して採用するべきだと思います。

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