間取りを考えるときは、玄関やLDKの位置や大きさを最初に考えると思います。
家の何を重視するかを考えて、そこに比重を置いて間取を構成していくのですが、どうしても軽視されがちなのが、廊下や階段です。
玄関の位置は、土地の形状や接道状況などにより制約が多いため、ある程度の位置や形が自動的に決まってしまう場合が多いと思う。
その後、LDKや寝室などを当てはめていって、間取りをつくりますが、最終的に問題となるのが階段なのです。
廊下については、シンプルでそれほど考える余地もないとも言えますので、比較的簡単に決まりますが、階段については廊下とは異なり、ある程度選択肢もあるため、なかなか難しい。
階段の形状はいろいろある
階段は、1階と2階をつなぐもの。
階段を変更すると、1、2階両方の間取りの変更が必要になってしまいます。
また、階段を難しくさせているのが、形状がいろいろとあって意外と選択肢が多い、というのも理由の一つです。
階段にはさまざまな形があります。
ストレート形、L形、U形、らせん形、この4種類が一般的です。
ストレート形
一番シンプルなもので1階から2階に真っすぐな階段です。
1階2階の行き来が一番楽にできます。
形がシンプルなだけに、費用も他の階段より抑えることができます。
ただ、小さなお子様がいる場合、階段を降りるときに下が真っすぐに見えるため、最初は怖がるかもしれません。
上の写真のように踏み板だけで蹴込板が無い階段は、見た目はいいのですが、下が見えてしまうので小さなこどもは余計に怖がるかも。
そして、お子様はもちろんですが、時には大人だって階段を踏み外すことがある。
ストレート階段の場合、その時のダメージは大きいです。
真っすぐなので、下手をすると2階から1階まで滑り落ちてしまうことも・・・。
L形
途中で90度曲がっている形の階段です。
曲がる部分が踊り場になっている場合が多く、足を踏み外して、滑り落ちた場合でもおそらく階段の半分程度で止まることになります。
ただし、この形状の階段は一番スペースを取ると言えるかもしれません。
それくらい大きなスペースが必要になりますし、その存在感も大きくなります。
U形
L形と同じような形ですが、90度ではなく180度曲がって折り返すような形の階段です。
比較的コンパクトにまとめられます。
L形と同じように曲がっているため、滑り落ちたときも同様に半分で止まることになります。
90度曲がりを2回して180度折り返すため、実際に階段が占めるスペースとしては、L形よりスペースが必要なのですが、間取りの中での印象としては、L形よりも小さく感じるかもしれません。
階段同士が接するように折れ曲がるため、他の部屋やスペースと隣接する長さが小さいので、存在感はL形よりも小さく感じるでしょう。
らせん形
これはもう好みの問題です。
らせん階段には、圧倒的な存在感があります。
シンプルなリビングに、らせん階段があるだけですごくおしゃれな雰囲気を作ることができます。
また、階段にとられるスペースを狭く済ませることができるのもメリットと言えるかもしれません。
らせん階段では、中央にポールがあり、その周りを回るように階段を昇り降りすることになります。
階段が常に回っているということは、階段の踏み板が常に三角の形になっているということです。
階段の外側から内側にかけて踏み板が狭くなっていくため、 回転するように昇り降りすることと合わせて、荷物を持っての行き来が多いような方にとっては、U形以上にかなり面倒だと思います。
階段の使い勝手を考えた場合では、まず採用することはないと思いますが、上手に生かすような間取りでは、本当におしゃれな雰囲気となります。
階段の形のおすすめは?
階段の形状は、見た目をどれくらい重視するかによっても変わってきます。
そして、後は間取りにどの形がはまりやすいか?という他の部屋との兼ね合いで選ぶことになります。
それは、らせん階段を除いて基本的に機能としては大差ないからです。
荷物を持っての1階2階の行き来が頻繁にあるという場合だけ、やはりストレート形がいいかな?と思うくらいです。
急いでいるときなど、やはりストレートのほうが圧倒的に早く動けます。
ただ、ストレート形は、階段を踏み外したとき下まで滑り落ちてしまう、というリスクはあります。
変に急いで動きやすいから落ちやすいとも言えるかも。
厳密には昇り降りの早さは、ほとんど変わらないと思うので、ストレートにこだわらなくても、間取りの関係から選択するだけだと思います。
家の中の階段の位置
階段の形状については、間取りの関係からある程度自動的に決まってしまう場合が多いです。
では、階段の位置はどのように決めるといいのでしょうか?
家の中のどこに階段をつけるか?これは生活の上で非常に重要なことです。
間取りを考える上でも、形状よりも位置を先に決めることになるはずです。
生活するうえで、1階と2階をつなぐ階段は、1日に何度も昇り降りすることになります。
その位置が悪ければ、非常に大きなストレスとなるでしょう。
このストレスは階段の形なんかより圧倒的に大きいです。
家の中の階段の位置として、一般的によく見られるのは、玄関とリビングです。
玄関
玄関ホールやそれに続く廊下に階段がある。
この間取りは昔からよくあり、以前はこの位置が絶対的なスタンダードでした。
玄関から階段で2階の寝室や自室などに行くことができますし、玄関ホール、1階の廊下、階段、2階の廊下など移動のための空間がまとまっているので、外出先から帰ってきたときや、出かけるときの動線を短くすることができます。
ただ、玄関から階段に直接行けるということは、2階の部屋に直接行けるということ。
1階のリビングにいたとしても、気がつかないうちに帰ってきていて2階にいる、という状況が起こりえます。
その逆もしかりで、2階にいると思っていたら、いつの間にかいなくなっていた、ということも起こりえる。
そして、2階にある部屋として代表的な部屋が、こども部屋。
こどもが知らないうちに帰ってきていた、または、出かけていた、なんてことも起こってしまうかも。
また、帰ってきて一人で部屋にいると思っていたら、友達がきていた、なんてことも。
この点が気になるためか、最近では玄関ホールに階段という間取は減少傾向にあります。
とはいえ、玄関ホールやその近くに階段があるというのは、玄関は家の端にあることが多く、間取りを検討してみると、意外と当てはめやすく、さらに、動線を考えた場合でも非常に合理的な場所でもあります。
リビング
階段の位置で玄関以外に多い場所はリビングです。
最近の階段の位置の主流は、玄関よりもリビングと言えるでしょう。
こどもが帰ってきたときや、こどもの友達が来たとき、部屋に行く場合、リビングを通ることになるため、知らないうちに帰ってきていたり、友達がいつの間にか来ていた、ということをある程度防ぐことができます。
また、こどもが大きくなって、家にいるときは自室にこもりがちになったとしても、リビングを通らないと部屋へはいけないため、最低限の顔を合わせる機会を作ることができます。
さらに、その家に住んでいる家族にとって、リビングというのは生活の中心。
そこに階段があるということは、家の中で部屋の行き来をする場合には、動線が短くなることを意味しています。
2階に行くときに、リビング - 玄関ホール - 階段 と行くよりも、リビング - 階段のほうが動線が短くなるのは当然です。
2階からキッチンに向かうときも、玄関ホールに階段があった場合、
寝室 - 階段 - 玄関ホール - リビング - キッチン
となるのに対して、リビングにあった場合は、
寝室 - 階段 - リビング - キッチン
という形でリビングを横断して玄関ホールに行く部分をカットすることになります。
階段の場所によっては、ほんの数歩から10数歩程度かもしれませんが、これが日常生活のなかで常に違うというのは意外と大きな違いとなります。
もちろんリビング階段にはメリットばかりではありません。
リビング階段の一番大きなデメリットは、リビングのエアコンなどの空調が効きにくくなるということ。
LDK一体の場合、リビングと階段が一体なので、結局LDKと階段が一体の空間となってしまいます。
LDK一体というだけでも、すでに結構な大空間であるのに、さらに階段と2階の廊下分が加わって、さらに大きな空間になってしまいます。
これではエアコンの効きが悪くなって当然です。
夏はまだいいのですが、冬が問題。
暖かい空気は上に、冷たい空気は下に向かいますので、冬には、エアコンから出た暖かい空気が階段を登り、2階から冷気が下りてきてしまいますので、リビングの階段の下では冷たい吹き降ろしの風を感じることになります。
もう一点大きなデメリットがリビング階段にはあります。
それは音。
リビングではしゃべっていたり、テレビを見ているなど比較的大きめの音が出ます。
それが結構2階に聞こえることになる。
これが玄関に階段があると、玄関ホール分の空間ができるため、想像以上に小さくなる。
この点も明確なデメリットと言えます。
階段位置のポイント
玄関、リビングともに一長一短なためどちらがいいとは言えません。
その他の場所に階段があっても、それほど問題はありません。
においが2階にも流れていってしまうという問題もあるため、気を付ける必要はありますが、ダイニングキッチンにつながっている階段もちょくちょく見かけます。
実際にそういった家で暮らしている人に話を聞いても、においはまったく問題なかった、という場合もあります。
あまりに奇抜なつながり方でない限り、どこでも大きな問題がないのが階段とも言えます。
でも、階段なんてどうでもいいし、どこでもいいのか?というとそうではありません。
2階建てでは、1階と2階をつなぐ通路として、どのような間取りでも、1日に何度も通る場所になりますので、いろいろと想定して位置を決めてください。
階段の間取り上での有効利用
間取りの上で階段を有効利用できる場合があります。
防音スペース、として用いる考え方です。
浴室やトイレなどは音が気になります。
廊下は仕方ありませんが、居室にそれらの音が聞こえないほうがいいのは当然です。
浴室やトイレの隣に収納などを配置して、防音スペースとする方法は良く取られますが、収納のかわりに階段でも、防音スペースとすることができます。
収納と違い階段には人がいる可能性のあるスペースではありますが、廊下のように通る場所であって、そこにずっといることはありません。
そのような階段を防音スペースとして、例えば、リビングと浴室の間に階段をつくれば、かなり音は聞こえなくなります。
トイレも同様に階段を挟んでトイレと居室があれば音を低減できます。
階段をただの動線の一部としてだけではなく、このように利用するといいでしょう。
階段をインテリアの一部に
階段は1階と2階をつなぐ廊下の延長。
たしかにその通りなのですが、それだけでは面白くない。
そんな時は、見せる階段にするという方法があります。
ソファなどの家具よりも階段ははるかに大きいものです。
家の中で存在感があるものとしては、キッチンと階段が1、2を争います。
リビングなどで綺麗に見せるように計算されたオープンタイプの階段などは、それだけで非常におしゃれに見えます。
費用もかかりますし、その存在の大きさから他とのバランスが難しいという面もありますが、検討するだけの価値はあると思います。
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