『ハウスメーカー』
家を生産する企業ということ。
でも、他の製造業のメーカーとは少し違うような気がしています。
実際に家を作ってない
ハウスメーカーといいながら、実際に家を作っているのは下請けの職人さんです。
他の製造業でも、OEMというものがあったりしますので、作ってないからと言ってメーカーではない、とは言えません。
でも、自動車メーカーなら、まったく作っていないということはありません。
ラインナップの一部をOEMしているという程度。
また、ファブレス企業という工場を持っていないメーカーもありますが、その多くは設計は行っています。
ハウスメーカーも設計は行っていますので、同じかというとそうではありません。
設計だけなら建築士の仕事です。
別にメーカーと名乗る必要はないはずです。
では、なぜメーカーというのか?
それは設計、施工まで行っているから。
施工、作る部分まで行っている。
ならばメーカーと名乗ってもいいような気もします。
でも、ハウスメーカーについては、ちょっと違うと思うのです。
施工といっても、結局は工務店などに依頼して施工しています。
基礎、足場、大工、内装、電気工事などなど、すべて外注しているといってもいいと思います。
あえて言うなら、現場監督がハウスメーカーの人間でしょうか。
設計、施工管理、部材発注がハウスメーカーの仕事と言えます。
・・・これってやってることはゼネコンと同じなんですよね。
鹿島建設、清水建設、大成建設などの小型版といってもいいのかも。
普通、ゼネコンは大きな工事を請け負います。
上にあげたような有名なスーパーゼネコンでなくても、工場や店舗などの大きな仕事を請け負う。
その一戸建版がハウスメーカーと言えると思います。
ゼネコンに家を依頼する?
一戸建てを建てるのにゼネコンにはお願いしません。
もっとも受けてくれるとも思いませんが。
ごくまれに、本当の大豪邸ならゼネコンが受けて工事をしているという話は聞いたことがあります。
ただ、それは世界的に有名な資産家の別荘ということでしたので、とんでもない額の工事だろうから、ゼネコンでないとできなかったのかもしれません。
例外はさておき、基本的にゼネコンは小さな工事は受けません。
そうなると、今までは小さな工務店や大工が直接受けて家を建ててきました。
工務店が抱えている大工や職人が直接施工する形です。
設計などは建築士に依頼したりしますが、やはり家を建てる工事の中で大工仕事が一番割合が大きかったから工務店や大工に直接依頼していたのです。
でも、工務店だと規模の関係で心配になったり、そもそも昔の工務店にはほとんど営業の人間はいません。
社長が営業して、工務店に所属している大工が作るという形態。
この方式だと、そこそこうまくは回るのですが、やはり社長は元職人だったり、実際にまだ現場に出ているというような関係上、販売のプロではないんですよね。
そこで出てきたのがハウスメーカーではないでしょうか?
販売や商品開発はうまい!
家の仕様をうまくパッケージにして販売する。
この当たりの作り方はハウスメーカーは上手です。
小さな工務店の中には、うちは何もかも自由ですというところがあります。
何もかも自由にできるということは、家の仕様を一から考えていく必要があります。
これはありがたい反面、すごくたくさんのことを考えて、決定していくことになります。
すごく大変で時間がかかるのです。
対して、ハウスメーカーでは標準仕様というパッケージを用意して、施主が考えるのを助けてくれます。
ハウスメーカー側からしてみると、助けるというよりは契約への近道や手助けとも言えます。
すべて自由ということは、選択肢は無限にあるということになる。
そして、それらをすべての仕様において行わなければいけない。
無数の選択肢があり、その選択しは探せばさらに増えていく、その組み合わせは膨大で、その中から選ぶ。
そうなると、考えたり悩んだり、いつまでたっても決まらないという状態になってしまう。
これは契約まで非常に時間がかかってしまうということになります。
この問題を解決するためにハウスメーカーは、標準仕様という制約を付けることによって時間を短縮しているのです。
標準が気に入らないならば、追加費用でオプション仕様を選択できる。
なんとなく選択できると結構自由に選んでいる気分になりますが、実際には自由ではない。
でも、これが決断をさせやすくしているのです。
無限にあるものの中から選ぶよりも、限られたものの中から選ぶほうが簡単で楽に決まっています。
これはメーカー側だけに限った話ではありません。
施主もこの制限に助けられています。
家を建てる前にどれだけ勉強したとしても施主は素人です。
そして、本やネットで調べた知識と現場は異なります。
極論ですが、本に書かれていても、実際の施工にはほとんど使われないというようなものまであるのですから。
ハウスメーカーの用意している選択の幅の中で選んでいけば、大きな問題もなく家は出来上がります。
仕様がきちんと練りこまれていれば、契約までの時間短縮、トラブルの減少、部材発注の簡略化などメリットは非常にたくさんあります。
このあたりの仕様のパッケージがハウスメーカーは非常に優れているのです。
施工は結局・・・でも、安心感はある
ハウスメーカーはあくまでも設計と施工管理。
ということは施工は小さな工務店などが行います。
ならば小さな工務店に頼めばいいかというとそれほど簡単な話ではありません。
小さな会社に家の建築を頼むとき、一番心配なのは何でしょうか?
おそらく誰もが心配するのが、会社が倒産したりしないか?ということ。
これが心配でハウスメーカーに依頼する方が多いのではないでしょうか?
たしかに、可能性として、積水ハウスが倒産する可能性はかなり低いでしょう。
大企業と中小企業の倒産件数を調べてみれば、大きな会社と小さな会社、どちらが倒産しやすいかは明らかです。
でも、建築後の倒産なら正直言えばたいした影響はないとも言えます。
倒産してしまったらメンテナンスはどうするのか?と心配される方もいますが、
家のメンテナンスってどんなことでしょうか?
外壁の塗装?
ネットで調べてみてください。
いくらでも塗装会社が出てきます。
雨漏り?
近所の工務店に頼みましょう。
こちらもネットで調べても出てきますし、リフォーム会社などもやってくれます。
家なんて、それほど独自の物はないのです。
メーカーオリジナルの部材でも、多くは一般的な建材の規格にそって作られており、置き換え可能。
構造だって他社の建てたものはあまりさわりたくない、というのはあるかもしれませんが、基本的な構造は大差ありません。
特別なものなんてないのですから、工務店に依頼すればどんな家だって修繕、リフォームは可能です。
このように考えると倒産して困るのは建築中ということになります。
さすがに建築途中に倒産されるのは困ります。
ただ、建築途中というのは保険に加入している場合もあり、その場合、保険金がおりるため、他社などに建築を依頼することもできるかもしれません。
そして、その可能性を考えましょう。
あなたが依頼した小さな工務店が建築中に運悪く倒産する可能性はどれくらいでしょうか?
ほとんど0に近いような確率だと思います。
極論をいえば、どんな大企業だって倒産の可能性は0ではありません。
倒産が心配だから大手ハウスメーカーに依頼するというのはいくら何でも心配しすぎだと個人的には思います。
ハウスメーカーのメリットは?
大手ハウスメーカーに頼むメリットは何でしょうか?
一番は大手である安心感だとよく言われています。
でも、それはあくまで感覚です。
実際に家としてメリットがあるわけではありません。
私などは個人的に大きな会社があまり好きではありませんので、まったく安心感は感じませんでした。
細かい理由は差し控えますが、大きな会社は、書類や形式を大切にします。
でも、私が欲しいのは、快適に暮らすことができる家。
きちんとした書類や形式などは重要ではない。
むしろまったく必要ないと思っていました。
たとえば、構造計算などは大変重要です。
でも、必要なのはその計算した書類ではなく、実際に強い家です。
強い家を作るのに必要なことは構造計算書ではありません。
ベテランの大工などは、ここにこのような補強を入れると強くなる、など様々なノウハウを持っています。
それは計算上には現れませんが、実際のものはしっかりしているということになります。
家を建てるにはそういった細かいノウハウの積み重ねが重要だと思うのです。
現在は、そういった職人を育てるのが困難になってきたため、マニュアルを作ってその通りに作るという形になっています。
マニュアルはある水準以上のものを作るという場合には有効です。
でも、あくまで水準以下のものを作らないための基準です。
マニュアルは、いいものを作るために必要なわけではありません。
悪いものを作らないためにマニュアルが必要なのです。
このように考えてしまうと、大手ハウスメーカーなどがの細かな基準はあまり意味のないのもに感じてきてしまいます。
さらに、これは経験上ですが、大手ハウスメーカーは大手というだけに規模が非常に大きいです。
社員はたくさんいます。
人がたくさんいると、どうしても品質を保証することが難しくなってきます。
ベテランから入社したての人、慎重な人、大胆な人、しっかりした人、いい加減な人、などなどいろいろな人がいるため品質がばらつきます。
この意味では大手を選ぶということはリスクがあります。
大工さんに頼めば、基本的にその大工さんが建てているので品質は常に均一といってもいいと思います。
小さな工務店では、何人か大工さんがいると思うので、品質のばらつきは多少あるかもしれませんが、数人の大工の技術は管理できる範囲だと思います。
でも、これが大工が何百人といたら、どうでしょうか?
とても一定の技術を持った人ばかりとは言えなくなると思いませんか?
だから、マニュアルが必要になるとも言えますけどね。
ただ、倒産しないと同じ意味ですが、ハウスメーカーの資金力はいざというときに頼りになります。
大きなトラブルによって大規模な修正が必要になったとき、中小の工務店では簡単に応じることは資金的にできません。
これが大手ハウスメーカーなら、明らかに過失がメーカー側にあった場合ならば、応じてもらえるでしょう。
施主の思う品質とメーカーの考える品質には想像以上に開きがあるため、なかなかそういったことにはなりませんが、トラブルの時などには大手のメリットを享受できるかもしれません。
ハウスメーカーってどう考えたらいいの?
安心だから大手ハウスメーカーに頼む。
たしかに会社は倒産することはほとんどないでしょう。
ですが、実際に施工するのが誰かわからないというのは、一つのリスクであると思います。
一番いいのは施工事例を見せてもらって納得のいく品質のものを建てた実績のある人にお願いするというのが一番なのですが、それは大手ハウスメーカーでは難しいことです。
そのように施主にお願いされても、そのメーカーの営業さんは、こんな風に言うと思います。
「弊社の家の建築に関わる職人は、皆、弊社の高い基準を満たした技術を持っているので誰が建ててもきちんとした家が出来上がります。」
こういわれて、その通りに違いないって思うほど、営業さんを信頼できるならいいのですが、なかなか難しいですよね。
いろいろと長々と書いてしまいましたが、言いたいことは一つ。
ハウスメーカーだから安心だ、とは言えないということです。
何社か見積を取って悩んだ時、大手だから安心という理由で決めるのだけはやめたほうがいいと思います。
実際にはハウスメーカーが悪いわけではない
ハウスメーカーをよくないような書き方になってしまいましたが、そんなことばかりではありません。
というよりもハウスメーカーが悪いというわけではありません。
あえて言うなら、住宅を施工、販売する会社すべてに言えることです。
ハウスメーカーの建てた家は、いい家ではないのか?
まったくそんなことはありません。
あくまで大手ハウスメーカーだから品質が均一であるわけではない、ということ。
当たり外れは大手メーカーだろうと、工務店だろうと少なからず存在しています。
その当たり外れがないように契約前にできるかぎり見極めて契約に至るのですが、ハウスメーカーではそれを見極めることが難しいのではないかということなのです。
実際、工務店が施工しても当たり外れは出てしまいます。
極論ですが、同じ大工、職人が施工しても、人間の仕事ですから当たり外れはあります。
ただ、優秀な職人さんが施工すれば、外れの確立は低くなり、さらに、外れといっても、こうしたほうがより良かった、という程度でたいした問題にはならないことが多いです。
さらにいうと、施主の意識の違いも大きいと思います。
たとえば、壁紙の仕上がりが少し気になったとします。
ローコストハウスメーカーで建てた場合は、ローコストだから仕方ないか、と感じ、大手ハウスメーカーで建てた場合は、これだけの金額を払ってこの仕上がりか、と感じてしまう方が多いと思います。
こういう意識の違いが大手でもトラブルとなる原因の一因ですね。
実際、ローコストも大手もどちらのハウスメーカーからも依頼を受けて仕事をしている工務店や職人さんはいますからね。
大手ハウスメーカーが悪いわけではありません。
大手ハウスメーカーでは、当たりを引く可能性はむしろ高いと言えます。
基本的に、金額は建てる家の質に比例しますから。
とはいうものの、上で書いたように、大手にもトラブルはありますので、契約のときには、工務店、ローコストハウスメーカー、大手ハウスメーカー、どこと契約する場合でもきちんと見極め、その金額の違いの意味もしっかりと考えて検討するといいと思います。
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