エアコン1台で家中が快適な温度にキープできる。
全館空調を普通のエアコン1台で行うというもので、うまく実現できたなら夢のような話です。
光熱費も抑えられて、エアコンの購入費用も抑えることができる。
さらに、室外機が何台も並ぶこともなく、外観もスッキリ。
いいことしかないように感じますが、そうではありません。
メンテナンスが煩雑になる
エアコン1台で全館空調をしようとすると、ダクトをあらかじめ施工しておく必要があります。
空気が流れる筒をあらかじめ壁に埋め込んでおいて、そこから空調をかけた空気が流れるという仕組みです。
上手にダクトを配置できれば、想像よりは効率よく空調できる反面、なぜか効きが悪いダクト口ができてしまうことのほうが多いと思います。
さらに、エアコンを何年か使っていると中が汚れて、カビが生えてしまうことはよくあることです。
エアコンの中も汚れるくらいなので、もちろんダクトの中も汚れます。
入口にフィルターが付いている場合が多いのでそれほど汚れませんが、それでも確実に汚れは侵入し、カビが生える場合だってある。
壁の中を通っているダクト内を清掃する方法は?というと、できるけどやらない、という形になると思う。
基本的に壁を壊して、ダクトを分解でもしない限りできませんから。
実質できないも同然です。
ダクト無しでやればいい?
では、ダクト等はなしでエアコン1台の全館空調を行うのはどうでしょうか?
それには空気の流れを遮る部屋の扉を無くすしかありません。
扉をあけっぱなしにして、サーキュレーターなどで空気の流れを補助してやれば、そこそこの快適さは得られます。
でも、あくまで、そこそこ。
さらに、扉を閉めてしまえば、もちろんまったく空調は効きません。
家族それぞれの部屋のプライバシーはまったくなくなってしまいます。
そして、サーキュレーターの助けも必須ですので、常に動かしておかなければなりません。
サーキュレーターを動かす電気代は、たいしたことはないのですが、要所要所に置かなければならないサーキュレーターの存在そのものが非常に邪魔です。
風の通り道は人の通り道でもあります。
サーキュレーターが置いてあることで、人の通り道をふさいでいては快適に暮らしていると言えるでしょうか?
廊下や階段の上などにサーキュレーターを置いて、全館空調を実現する。
その工夫と努力には頭が下がりますが、デメリットを考えたとき、単純に各部屋にエアコンを設置するほうがはるかに快適なのでは?と思ってしまいます。
間取りも制約を受ける
エアコン1台で快適に過ごすために、間取りをしっかりと考える。
エアコンを取付ける位置はもちろん、階段や廊下の形も重要となります。
もしそれでうまくいったとする。
でも、その間取りってエアコンのことを抜きにしたときに本当にベストな間取りだったのでしょうか?
エアコン1台での空調にとらわれるあまり、そのほかのことが犠牲になっていないでしょうか?
非常に疑問を感じます。
まあ、エアコン1台で家全体の快適さを追求する、という実験的なことを面白いからやっている、というのなら話は別ですが、光熱費を下げたい、エアコンの費用を掛けたくない、など費用的な理由などの実利を求めてやる場合は、はっきり言ってまったくおすすめできません。
空調面での快適さが実現できたとしても、部屋の扉を閉めることが出来ない、サーキュレーターが邪魔になる、そもそも間取りに制約を受けるなど、他の面で快適さを損ねるようであれば、空調だけでなく、家全体、暮らし全体として考えると、あまり意味がないのではないでしょうか?
コメント