昔のように、キッチンが独立していたときと比べ、今のように、LDKが一体となっている最近の間取りでは、キッチン選びは非常に重要で難しくなっています。
以前ならば、とにかく便利であることが重要でしたが、現在では、便利であるのは当然として、キッチンを家に溶け込ませた形で、上手に見せることが重要になってきました。
ここではキッチン選びの参考になるように、キッチンの選び方のポイントを紹介します。
LDKの中のキッチンの位置づけ
ここで言うキッチンの位置というのは、LDKの中での配置という意味ではなく、もっと大きな意味、生活する上でのキッチンの位置づけという意味です。
たとえば、料理が好きな人とそうでない人では、キッチンの捉え方も変わってきます。
料理が好きでない人は、あまりオープンキッチンにするメリットは少ないような気もしますし、料理が好きでよくお客さんを呼んでもてなしたいという人とは、キッチンの役割が違います。
まずは、普段キッチンにいる時間が長いか短いかで考えるとよいかもしれません。
キッチンにいる時間が長い場合、キッチン自体が居心地がいい空間である必要があります。
それはオープンキッチンであったり、アイランド型であり、キッチンにいても疎外感がなく、開放感があり、キッチンからテレビも見えたりするとなおいい。
対して、キッチンにいる時間が短い場合は、一番に利便性です。
とにかく動線が短く、てきぱきと料理等をこなせる事。
クローズドキッチンやセミオープン(対面型)が、便利化と思います。
このように使う人によって、いいキッチンというのは異なります。
また、もう一つ重要なことはキッチンのとるスペースです。
オープンキッチンでは、キッチンそのものの奥行きを大きく取ることと、通路を狭く取ると開放感が損なわれるため、通路の幅がある程度必要となり、どうしても面積を多く取る傾向があります。
対して、クローズドキッチンでは、比較的面積を狭めることが可能です。
この場合の通路は、通路としての役割だけ。
人がすれ違うためある程度幅が欲しいという方もいれば、シンクやコンロから背後の食器棚、家電収納等が振り返って近いほうがいいという方もいる。
また、もともとキッチンに開放感は求めていないため、通路の幅が狭くても、見た目のバランスとしても問題にはなりませんので、キッチンを本当にわずかにですが狭めることが可能です。
キッチンにいる時間にが長いので、オープンキッチンにする。
オープンキッチンは広い上に、キッチン自体も高くなります。
当然お金もかかるということ。
ただ、これは仕方のないことです。
長い時間いるのだから、お金を掛けてでも快適な空間とすべきだと思います。
実際に、オープンキッチンとした場合、たいていはLDKの主役はキッチンとなります。
ここにしっかりとお金を掛けることによって、見た目がかなり引き締まりますので、予算の都合もあると思いますが、オープンの場合は、しっかりとお金を掛けてください。
キッチンの配置
キッチンの位置づけが決まったら、次は実際のキッチンの位置、配置です。
よくある配置の例をいくつか示します。
すべての図でキッチンの形はセミクローズの対面型となっていますが、そこはそれぞれの希望するキッチンに置き換えて検討してください。
例1.とにかく広く見える
ここまでまっすぐでないにしても、LDKのつながりがまっすぐなもの。
アイランド型などのオープンキッチンで開放感を一番感じることができる配置です。
とにかく壁がなくすべて見通せるため、部屋が非常に広く感じられます。
広く感じられる反面、LDKにおけるキッチンの存在感は非常に大きいです。
例2.リビングからの視線を切りたい
来客などが多くない最近では、客間があるような家はかなり少なくなってきました。
友達などは遊びに来ても、あえて客間や応接間なんて普通の家にはまずないですよね。
その場合、お客さんはリビングに通すことになります。
友人とかならいいのですが、不意の来客があり、そのときお客さまからキッチンが見えないほうがいい場合、このような形がいいでしょう。
例3.動線を短くしたい
例1.例2.では、どうしてもキッチン越しにダイニングテーブルがあるため、
料理をテーブルに持っていく動線としては、キッチンを回り込む形となります。
これを解消したのがこちらの配置。
これなら作った料理をテーブルに持っていくときの動きを小さくできます。
例4.キッチンとリビングを近づけたい
上であげた例では、すべてキッチンとリビングの間にダイニングが入ってきます。
食事後に皆がリビングでくつろぐ時、どうしてもキッチンは孤立した形になります。
見えてはいますが、距離があるため一体という感覚にはなりにくいです。
でも、この例3よりさらにキッチンとリビングの距離を縮めた形なら、キッチンとリビングは隣り合わせです。
会話は聞こえてきますし、会話に参加することもできそうです。
ただし、会話が聞こえるということは、キッチンの音も聞こえるということ。
リビング側にはキッチンの音が邪魔と感じることもあるかもしれません。
まずは、ガスか電気か
キッチンの形が決まったら、次はいろいろな仕様を決めます。
まずは、コンロについて。
ガスにするか電気にするか。
これは好みによるところが大きいです。
電気というのは当然IHのこと。
ガスとIHでは、調理の仕方はかなり異なりますが、以前ほど電気が使いづらいということもなくなってきています。
また、このコンロの選択がオール電化かそうでないかの選択ともいえますので、かなり重要な選択となります。
いくつか比較してみます。
掃除が楽なのは?
掃除の点においては、IHが圧倒的に楽です。
トッププレートには、五徳などの出っ張りもなく、凹凸が少なく、フラットなため汚れが貯まるところが少ない。
これはトッププレートだけでなく、グリルにもいえます。
グリルの庫内も最新のものは、非常にシンプルなつくりとなっており、グリル皿を外し、庫内はさっと拭くだけ。
非常に簡単です。
安全面は?
安全面については、IHといいたいところですが、最新のものでは差はあまりありません。
あえて言うならIHが安全という程度です。
ガスの場合、五徳の上になべやフライパン以外のものを置くことはあまりありません。
ただ、IHの場合、非常にフラットなため、とりあえず物を置いておくということがあります。
そして、隣のやかんを暖めるため、IHをON。
このとき過って隣のIHの口をONすると非常に危険。
そのために光るようになっているのですが、IH=安全という思いが、確認を怠らせる原因となります。
最新のガスコンロの場合、温度管理によって温度が上がりすぎたときは、火が小さくなったり、吹きこぼれなどによる失火時もセンサーによりガスが止まります。
昔のものに比べ、非常に安全になっています。
ただ、やはりガスの場合は火が出ていますので、そこから何かに燃え移る危険があるため、安全面では、わずかにIHが優位かなという気がします。
調理しやすいのは?
これはガスといっていいでしょう。
まず、ほとんどの方がIHよりもガスに慣れていることが理由です。
ガスとIH。
使ったことがあるのはどちらでしょうか?
ガスを使ったことがないという人はほとんどいないと思いますが、IHはまったく使ったことがないという方も結構いらっしゃると思います。
そして、火が見えるということ。
火加減の調整がIHはどうも直感的ではない。
慣れればそれほど差はないのですが、ガスのように火が直接見えるわけではないため慣れるまでが難しいと感じます。
さらに、鍋やフライパンなどの素材によってはIHでは使えない。
土鍋などは当然IHでは使えません。
また、ガスとIHでは、調理の仕方がかなり異なります。
例をあげると、まず、IHではフライパンを振ってはいけません。
振っていけなくはないのですが、振ると火が入らないのです。
ランニングコストが安いのは?
これはIHだと思います。
特に都市ガスがきておらず、プロパンガスのところではIHが安いでしょう。
ただし、このランニングコストというのは難しい問題をはらんでいます。
キッチンをIHにする場合、おそらくエコキュートを採用して、オール電化にすると思います。
そうするとガスの基本料金がなくなり、IHのほうがかなりランニングコストが安くなる計算となります。
でも、初期費用として、エコキュートの代金が増えます。
このエコキュート、だいたい50万円以上の増額となります。
例えば、月に5000円ランニングコストが下がったとして、年間6万円の得。
ただ、初期投資の50万円を取り返すために、8年以上かかるという計算です。
それまでにこの高額なエコキュートが故障した場合などを考えると、それほど得と言えるのかどうか?
結局どちらがいい?
いろいろと比較しましたが、基本的には甲乙つけがたい。
結局は、どちらが料理しやすいかで決めたほうがいいと思います。
以前はガスが圧倒的に料理しやすかったのですが、最近はIHも性能がよくなり、さらに、皆さんがIHになれてきたのもあり、その差は小さくなってきました。
ショウルームなどでも、IHの体験会などもよく企画されていますので、参加されるなどして料理のしやすいほうを選ぶのが一番いいと考えます。
コンロの機能について
コンロについて、ガスだろうがIHだろうがレンジフード連動機能はついたものがおすすめ。
この機能をつければ、普段の料理のとき、レンジフードのスイッチを操作する必要は一切なくなります。
フードのスイッチを押すのを忘れ、油煙やにおいが部屋に充満してしまう、ということが無くなりますので、レンジフード連動機能はあったほうがいいと思います。
これまでで、キッチンの形状、配置、コンロの選び方のポイントを紹介しました。
ここからは、細かい仕様についての選び方の紹介です。
キッチンの天板とシンク
コンロの次は、キッチンのワークトップ、天板です。
これが次に大きな選択項目となります。
ただ、この天板の選択は、ガスかIHかの選択のように、オール電化にするかなど、他のものにまで影響することはないので、好みで選んでかまいません。
天板の種類は大きく分けて2種類。ステンレスと人工大理石。
それぞれの特徴を紹介します。
ステンレスの特徴
- 熱に強い
金属ですから、当然熱には強いです。
熱いなべやフライパンを直接置いても特に問題はありません。
問題ないとは言うものの、このステンレスは基本的にかなり薄いものです。
で、その裏側はというと普通に木があったりします。
そう考えるとあまり熱いなべなどをそのまま置くのはどうなのでしょうか?
- 傷、へこみが気になる
金属といっても、表面には傷がつきますし、上にも書いたように薄い金属板なので、どうしてもへこむことがあります。
簡単に言うと車をぶつけてへこむのと同じこと。
まあ、車のように動いているわけではないので、なかなかへこむようなことはありませんが、物を落としたりすればへこみます。
しかも、傷は目立たないようにすることはできるのですが、へこみに関しては消すことは非常に難しいです。
- 錆びる
ステンレスは、錆びないと思っているかもしれませんが、錆びます。
あくまで錆びにくいだけ。
普通にお手入れしていれば、まず錆びませんが物を置きっぱなしにしてしまったりすると、その下は少々心配です。
ステンレスにも種類があって、かなり錆びにくいものもあれば、ちょっとお手入れを怠ると錆びるものもあります。
人工大理石の特徴
- 熱に弱い
人口大理石といっても、実際に石ではなく樹脂です。
樹脂というと一番最初に浮かぶのが、プラスチック。
まさにプラスチックと同様に、熱にあまり強くありません。
そのためなべやフライパンを熱いまま直接置くようなことはできません。
ただ、最近のグレードのいい人工大理石は、熱いなべなどをそのまま置いても大丈夫なものも出てきました。
- シミになりやすい
キッチンのワークトップの人工大理石は基本白色が多いのですが、シミになりやすいという欠点を持っていました。
こちらも最近は表面にコーティングが施されるなど、かなり改善されてきておりそれほど気にならなくなってきました。
- 傷がつきやすい
人工大理石は、大理石ではなく樹脂ですので、基本的に傷がつきやすい。
プラスチックのまな板に傷がつくように、当然傷はつきやすいです。
ただ、普通に使っている分にはどんどん傷がついて気になることはありません。
人工大理石はデメリットばかり?
特徴を見てみると、なんだか人工大理石はデメリットばかりに思えてきますが、
ここにあげた特徴は、最近ではどんどん改善されていっています。
結局は、ステンレスと差はなくなってきているといっていいでしょう。
そして、絶対にステンレスに勝っているのは、その見た目。
キッチンがLDKの中で大きな割合を占めるにしたがって、人工大理石を採用する割合は増えていきます。
例えば、アイランド型のキッチンでは、ほとんどが人工大理石の天板。
これは部屋の中で見えるようにステンレス天板のキッチンがあると、存在感がありすぎて、あまりに異質な存在となってしまうからです。
部屋全体がステンレスなどを多用したメタリックなイメージならありかもしれませんが、実際に、アイランド型などでステンレスワークトップを採用されている事例は、あまりありませんし、うまく部屋にマッチさせることは非常に難しいです。
私個人としても、アイランド型やリビングからもよく見える形のキッチンには、
人工大理石をおすすめします。
人工大理石を選んだ場合
ワークトップにステンレスを選んだ場合は、シンクも当然ステンレス。
でも、人工大理石を選んだ場合には、シンクにも選択肢があります。
ここでもステンレスか人工大理石のどちらかを選ぶことができます。
そして、シンクでは、それぞれに大きくメリット・デメリットがあります。
まず、シンクに人工大理石を選んだ場合、ワークトップ、シンク共に人工大理石となるため、継ぎ目がなくお手入れが非常に楽です。
そして、見た目もいい。
シンクのみいろいろな色を選ぶことができて、明るいキッチンに仕上がります。
対して、ステンレスを選んだ場合には、どうしてもワークトップとシンクの間に、継ぎ目ができてしまいます。
そのできた継ぎ目の間に汚れがたまり、少々お手入れに手間を掛けなければなりません。
ちなみに継ぎ目はメーカーによってかなり小さなものもあります。
隙間が限りなくないようなものもありますが、継ぎ目の隙間がまったくないわけではありません。
多少は汚れますので気を付けてください。
ただ、人工大理石のシンクにもデメリットがあります。
それは食器を落とした時。
人工大理石は樹脂なのでやわらかいと思いがちですが、ステンレスに比べると非常に硬い。
食器をシンクに落とした時、人工大理石のシンクの場合、かなりの確立で割れます。
それまでステンレスのシンクだった方はビックリするでしょう。
絶対に割れるといってもいいほどに割れますから。
これがステンレスのシンクの場合、落としても割れないことも多いですよね。
本当はワークトップにおいても同じ。
人工大理石は、割れやすいのですが、食器を落とす頻度がシンクとは違います。
シンクには洗い物のときなど、食器を落としたりする回数がワークトップより多くなります。
その時、シンクがステンレスならば被害がすこしは少なくなるでしょう。
おそらくステンレスシンクだとシンクが薄いためクッションのようになるのでしょうね。
このようにシンクの素材に関しては一長一短。
ただ、人工大理石天板とステンレスシンクの継ぎ目については、メーカーによってかなり継ぎ目が目立たないものもありますので、ご検討の際には、そのあたりも注意してみてください。
収納の選択
ここまで決まってしまえば、後はメーカーの選定することになります。
この仕様にて各メーカーのショウルームにて比較、検討することとなります。
まずは、キッチンの収納部分。
これについては各社それぞれがいろいろな工夫をしています。
そして、どこも一長一短です。
LIXILのらくパッと収納、クリナップのSSサーボなど各社いろいろな工夫があります。
これは実際に触ってみて比べる。
実際に触ってみて使いやすさを体感してみて選ぶしかありません。
こういったものの使用感には結構個人差が出てきます。
例えば、らくパッと収納についても、非常に便利と感じる人、こんなの要らないという人、意見が分かれますので、実際に使用する人の使いやすさが一番重要ですので、
必ず触ってみて比較しましょう。
そして、比べるときに気をつけたいのが、引き出しのサイズ。
キッチンの収納部には、ほとんどの方が引き出しを採用すると思いますが、その深さや引き出せる量など、収納に有効に使えるサイズには注意が必要です。
ショウルームで見るときには、らくパッと収納やSSサーボなどの機能は、非常に印象的。
でも、その特徴に惑わされて、収納の基本的な大きさを忘れがちですので、
その点は注意して比較してください。
レンジフード
レンジフードについても、いろいろありますが、絶対につけたほうがいい機能としては、コンロとの連動。
これだけはあったほうが絶対に便利です。
この機能だけは外せません。
予算が厳しいとしても、ここは絶対だと思います。
これから何十年も毎日使う物です。
そのストレスが少しでも軽減されるなら、もはや選択の余地はありません。
さらに、つけ忘れがないことにより、においも広がらない。
油煙も最小限に抑えられる。
連動なしを選ぶ理由がほとんどありません。
後は、お手入れのしやすさで比較してみてください。
自動洗浄機能などがついたものもありますが、この機能があるものは、無いものと比較して一気に金額が跳ね上がります。
あれば便利なのですが、お手入れが簡単ならば、そこまでは必要ないかなと思いますね。
自動洗浄といっても、水洗いをするだけですので外して洗剤をつけて洗うほうが、確実にきれいになりますから。
そのほかの選択
ここまでを選んでしまえば、メーカーも当然決まるでしょうし、キッチンとしてはある程度固まってきています。
あとはカタログから細かいものを選ぶだけです。
選ぶものとしては、扉の色、水栓、食器洗浄機、カップボードや吊戸棚が必要ならば、収納の大きさや各機能などまだいろいろありますが、実際に見て比べて選んでください。
この中でも扉の色については、色を変えただけで、ビックリするほどの価格差が出てきます。
単純に一番好きな色を選びたいところですが、どの程度キッチンの扉にお金を掛けることができるかという話にもなります。
キッチンの扉の色で高いものと安いもので悩んでいる。
どうしても決められない。
そんな時はキッチンやカップボードがどれくらい目に触れるかで判断してください。
非常に目に付く場合は、ある程度お金を掛けてでもグレードの高いものを選んだほうがいい。
費用対効果の観点です。
それだけで部屋に高級感がでますからね。
逆にあまり目につかないようなときは、安いものでもいいかもしれません。
何度か見てみる
最後にショウルームを見る際のアドバイスを一つ。
最終的に仕様が固まって、細かいオプションも選んで、キッチンが決定した後、
一度時間を置いて、もう一度見に行って確認してみるのがおすすめです。
これはどのようなものにも言えることかもしれませんが、時間があくことによって冷静に考えることができるし、必要なものや不要なものに気がつくことがあります。
あれほど絶対にこの色と思っていたものも、もう一度見てみたら、別にこっちの安いほうの色で十分かもって思うこともありますから。
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